プログラマーはフリーランスの夢を見るか

最近Twitter上で、#駆け出しエンジニアと繋がりたい というハッシュタグが怪しい情報商材の狩場となっていることで話題になっているようです。
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エンジニアやプログラマーの養成コースを受講して、初心者でも数ヶ月でフリーランスプログラマーとしてがっつり稼げる、というたぐいの話に引っかかる人が多いとのことです。確かに数十万円かかるコースというのは存在するのを見たことがあります。専門学校のようなところで講師に直接教えてもらうような場合には適切な金額なのかなとは思っていました。

オンラインコースの相場感

しかしオンラインコース=動画を見るだけ、であればもっと安い価格で同様の勉強が出来ます。ドットインストールといった優れたコースが無料で提供されていたりします。Udemyでも毎月のようにセールをやっているので1500円程度で優秀なコースを受講できます。

特に英語ができればなおさらUdemyは素晴らしいコースが多数存在します。学位という形に拘らないのであれば、Udemyだけにお金と時間を使って2年くらいみっちり勉強すれば相当な技術が身につくと思います。私もUdemyのコースをかなりたくさん受講しました。

オンラインコースフリーランスになれるか

1500円でも40万円でも、その価値は本人が納得するなら問題ないのかとは思います。しかし実態として安易にフリーランスで稼げる、と言った言説に載せられて結局何にもならなかったとしたらそれは残念なことですよね。

オンラインコースを受講しただけでフリーランスとして活躍できるか、と言えばハッキリと無理だと思います。それには理由があります。

どこから仕事をもらえるか

フリーランスが仕事をもらえる先として手堅いのは、元々働いていた会社関係です。実際にはその会社努めを辞めたくてフリーランスになっていることが多いとはいえ、良好な関係を保っていればそこからの仕事は手堅く入ります。発注する会社があなたの能力や信頼性にしっかりとした担保を持っているからです。

フリーランスになってすぐに気づくことは、努めていて毎月定期的に決まった金額が振り込まれることがどれだけ有り難いことが、ということです。新しいクライアントを探す労力、そこと金額や納期や契約の交渉をイチからする労力は大変なものです。黙っていれば仕事が割り当てられて、それに給料がついてくるというのが恵まれていることは辞めてから実感として理解出来るようになります。

ではそもそもオンラインコースだけを修了しただけの自称エンジニアに誰が仕事をくれるのでしょうか。クラウドワークスのようなところでは、単価が非常に安いものが多く見られます。金額の安さを売りにしていてはエンジニアとして先がありません。評価をもらうために一時的に赤字案件に手を付けるということがあるとしても、競争率の非常に高いところで戦って仕事を勝ち得ること、そしてそのクライアントから高評価をもらえるほどに仕事を成し遂げることが本当にできるでしょうか。

技術以外の経験や交渉

フリーランスということは、自分で金額や納期、作業範囲などを区切って交渉することが必要です。しかしシステム開発のような案件ではそもそもクライアントが自分の必要としているシステムやプログラムを上手に説明できないことがほとんどです。

適切な相場で作業範囲を区切ったり、ヒアリングから必要としている事柄を導き出したりするのは一朝一夕にできることではありません。オンラインコースの課題では明確に何をどのようにして、どんな完成形が求められているのかが明確です。しかし実際のプロジェクトでは、完成形を自分でクライアントから聞き出して絵を描いてあげるところからスタートするのです。

課題でもなく、自分で作り出す新しいサービスでもありません。クライアントが欲しい物が何か、それを聞き出して形にするには泥臭い経験が必要なのです。

トラブルシューティング

多くのプログラマーが自分の書いたプログラムに満足していません。方法論として美しいプログラムの書き方や設計の仕方、みたいなものはみんな模索し、それを実行しようと最善の努力を払います。しかし現実には納期が迫っていたりして、簡単で雑なプログラムをとりあえず書いて、それがそのまま本番に使用されるということもあります。

中にはセンスがあって学んだ技術をどんどん応用できる優秀な方もいることでしょう。堅牢な設計を最初から考えられる方もいると思います。しかしプログラムには癖があり、同じプログラミング言語でもマイナーバージョンが少し違う環境で動かそうとするだけでエラーが発生したりすることもあります。

そんなときそのプログラミング言語での経験が、使っているOSの経験が役に立つことが多いのです。エラーメッセージを見ただけでピンとくることが増えてきます。同じ問題で苦労したことがあるからです。

どこで問題が生じているのかはエラーメッセージだけを見るとミスリーディングなこともあります。知らないと解決策にたどり着かないような問題もたくさんあります。

オンラインコースではまずそのような問題が起きないように生徒の環境をちきんと整えて、本来学習すべき技術を効率的に学べるようになっています。ですから理不尽なトラブルが発生すると、それに対処できないケースが多いのではと考えます。

最初からフリーランスは無理と考えたほうが良い

そのようなわけで、いきなりフリーランスを目指すのは一部の才能のある方を除いては無理だと思います。たしかに他の職業よりは給料や報酬を高く設定してもらいやすい職業ではあります。しかしそれも会社やクライアントが満足出来る成果を出してこそのことです。

ドラクエでも最初から賢者でスタートしても全体に能力が低くて使い物にならないのではないでしょうか。戦士などで十分の経験を積んだ後に転職することで大きな戦力になります。将来的にフリーランスになりたいとしても、地道な経験を積むことが近道ではないかと思います。