カタコンベ

カタコンベ (講談社文庫)

カタコンベ (講談社文庫)

Book 1st新宿店で2冊しかないイチオシ書籍として紹介されていた。その割にはAmazonの平均レーティングが3.0くらいとイマイチ振るわない。そのギャップはなんだろうと思い、読んでみた。
実際エンターテイメントとしてはとても面白いと思う。展開も速く、飽きることがない。一度読み始めたら、読み終わるまで本を置くことはなかった。
あらすじとしては、新しく見つかった巨大な鍾乳洞に大掛かりな調査チームが探検に当たることになるものの、第一チームが中に入った途端にがけ崩れがあり、チームが閉じ込められる。そこにたまたま他の入り口を発見した洞窟の専門家が彼らを助けに行くが、その入ったところからは出られないため新たな出口を探す。そこに不自然な遺体を発見し、過去の隠された殺人事件と登場人物がかかわって行く。洞窟には水が溜まって行き、残り数時間で水没してしまう。
そんな内容なため、ハラハラドキドキはするが、本格ミステリーとはちょっと違うかもしれない。解説にも出ているが、クリストファー・ハイドの『大洞窟』を思い起こさせる、洞窟脱出モノの佳作に仕上がっていると思う。
Amazonの批判を見ていると、登場人物の多さ、ミステリとしては偶然に頼ったトリックや展開、なぜ犯人は証拠を隠滅していなかったのか、などが挙げられて、それはもっともな批判だと感じる。
しかし『グレイブ・ディッガー』などもそうだが、スピード感を切迫感が売りなのであって、本格ミステリではないのでそこは評価から減点しなくてもよいのではないかと思う。
純粋なトリックの妙や、叙述の巧みさではなく、純粋にミステリ風味のエンターテイメントを楽しみたい方、お勧めです。天下のBook 1stが社名をかけて薦めているだけのことはある一冊です。