世界のモバイルミュージックの市場 2012年までに約175億ドル規模に

世界のモバイル音楽のマーケットは現在如何ほどのものであろうか。

英国のリサーチファームであるJuniper Researchが発行した最新のレポートに興味深い調査結果が報告されていた。

http://www.juniperresearch.com/shop/viewpressrelease.php?pr=80

世界のモバイルミュージックの市場全体は2012年までに約175億ドルに達し、そのうちのほとんどを音楽レンタルサービスと着うたフルのようなサービスでまかなわれるだろうということだ。

しかしながら着メロはというとほとんどの地域でピークは過ぎた、というのがそのレポートの分析だ。2007年ではそれでもマーケット全体の62%を着メロが売り上げているものの、それが2012年までには全体の38%のシェアに過ぎなくなるだろうと予測している。

この分野では世界に先駆けていた日本の現状を見ればそれは実感できることだろう。日本国内の着メロでうなるように儲けた各CPたちはドコモの行くところどこでもついていった。着メロは海外でもウケて大きな収益源となっていった。日本は300円で5曲とかを落とせる時代にアメリカでは1曲3ドルとかで販売しても飛ぶように売れた時代があった。
しかしそれが各社の事業意欲を損ねて、撤退した会社、大幅なリストラを慣行せざると得なかった会社は数知れずとなった。一時期あれだけいたMIDIの開発者たちは今どのようにして生計を立てているのだろうと心配になってくるものだ。

レポートが指摘するようにすでに着メロの単価が需要と供給のバランスからして保てなくなっているため、広告など別の収入源を模索しないとそれが成り立たなくなっている。ゴルゴンゾーラのようなまずまずの成功例もあるが、それでもスタッフを余裕を持って食わせるのは簡単ではないはずだ。

ヨーロッパでもフランスではすでに広告付きでコンテンツはタダ、というモデルは主流になり始めている。が、実際のところ国内外を問わずそれらのモデルがはっきりとした収益源に成長するにはまだ至っていないのが現状だろう。

マーケットははっきり存在し、規模の大きい。Appleのような機器メーカー、Vodafoneのような大手通信事業者、Nokiaのような端末メーカー、ヴァージンモバイルのようなMVNO事業者、原盤を所有するレーベルたち、そして諸々のコンテンツプロバイダー、アグリゲーターたちが、小国の国家予算に匹敵するマーケットを舞台に繰り広げるつばぜり合いにどのような決着がつくのだろうか。

一つ言えるのは、元々存在しなかったところにiPod(とiTunes)のようにマーケットとニーズそのものを作り出す画期的な手法が、現在のところ既存のモデルの延長や看板のかけ換えにすぎないビジネスモデルを駆逐し、より成功しているということだ。iPodはまさにAppleにとって起死回生の逆転ホームランだったが、その前途はまだまだ厳しく、株価のブレも続いている。いつまでも独走できるわけではないし、アップルもそれをわかっているからこそ、iPhoneSDKの公開やJavaとの連携などの話も小出しに出てくるのだ。

しかし多くのプレーヤーが乱立し、どこも可能であれば儲けを独占したいと思っているのが現状であろう。かつてオーストラリアのVodafoneが突然コンテンツプロバイダーを追い出して、ポータルの各ジャンルを1社独占で運営させるようにしたことがある。短期的に見れば囲い込んでおけばお金が全部自分のところに流れ込んでくるだろうが、コンテンツポータルは文化祭のような盛り上がりも必要である。個々の出店、企画が盛り上がってこそ全体が盛り上がるのだ。iモードの成功は各CPがアイデアを競い合ってマーケットを成長させたことにも一因がある。

黎明期から安定期へと移行しつつあるモバイルミュージックの市場も、いろいろなステークホルダーが協力し、競い合うことによって盛り上げて行ってほしいものだ。