Nokia Comes With Musicサービスの動向

日本での知名度は低いのだが、ノキアはいわずと知れた世界NO1の電話機メーカーである。世界のどこに行ってもみんなノキアの電話を持っている。その勢いは留まるところを知らず、2007年度第4クオーターは44%もの増益を報告した。

http://money.cnn.com/2008/01/24/news/economy/nokia_earns.ap/index.htm?postversion=2008012407

最近でもGoogleとの本格提携など、ただの端末メーカーではなく本格的にサービスの力を入れる攻めの戦略が目立っている。

さてそんな中で昨年12月に開催されたのNokia World 2007で発表された、本格的な音楽サービス、「Comes With Music」についてはどうなっているのだろう。

このサービスは簡単に言うと、特定のノキア端末を購入すると、1年間タダで楽曲が無料でダウンロードできる、というものだ。その楽曲は1年の無料期間が過ぎてもずっと聴き続けることができるし、1台のPCと1台の電話機に楽曲を保存できる。ただし発表時点ではUniversal Musicだけが楽曲提供するレーベルとして名乗りを上げていた。ガンズとかボン・ジョヴィシェリル・クロウなどがタダでダウンロードし放題ということだろう。

欧州では日本みたいにパケット定額プランがあまり普及していないので、楽曲自体はタダでも、ダウンロードのデータ通信に500円とかかかるとバカバカしい。そのあたりもよく考えていて、イギリスのThe Cloudというプロバイダと提携して、NokiaのMusic Storeに端末から無料アクセスできる仕組みを用意した。

http://www.thecloud.net/page/4076

Nokiaのハイエンドモデルには無線LANの機能がついているので、オペレーター(日本で言えばドコモのi-modeAUezweb)を経由せずにダウンロードできる。無線LANからの受信なので、当然データ通信はタダ。よく考えられている。

ただそうなると面白くないのは各種オペレーターだ。日本でもNECやらシャープなどの端末メーカーが前面に出て音楽配信サービスをしているわけではない。Sonyはもともとレーベルを持っているので別であるとはいえ、それでもオペレーターとの関係を損なわないようにやっていることだろう。ヨーロッパではOrangeならOrange Worldなどオペレーターが一手にサービスを運営している例が多く、日本のように各種コンテンツプロバイダーがそれぞれのサイトを立ち上げて独自にビジネスを展開している例は少ない。

Nokia Comes With Musicが始動して、音楽ダウンロードの導線がオペレーターの手を離れるのをおもしろくないと感じるのは当然のことだ。事実、イギリスではOrange、T-Mobileなど大手が、NokiaのフラッグシップモデルであるN81の販売を見合わせるという動きがある。

http://www.intomobile.com/2007/10/08/the-n81-recieves-no-opeartor-love-in-the-uk-more-countries-to-follow.html

本格始動は2008年の夏としているが、Universal以外のレーベルの参入の発表もまだ無く、肝心のComes With Music対応端末の値段も非公表だ。それでこの話がどうなっているのかと思って調べてみると、1月27日にブルームバーグとのインタビューにノキアの上級副社長Tero Ojanpera氏が答えていた。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601085&sid=aPa8i7xVRSi4&refer=europe

このインタビューの中で同氏は「オペレーターにもお金が落ちる取り決めをする」と述べて、オペレーターへの配慮を示している。どのオペレーターも音楽サービスから得られる収益やアクセスの流れをバイパスされるのに危機感を示しているからだ。日本とは異なりドコモのようなキャリアがビジネスの舵取りをしているわけでは無く、キャリアと端末メーカーの力関係は大きく異なる。そのため互いの距離感が特に重要となってくる。とりわけノキアは世界最強の端末メーカーであるため、正面切ってノキアと戦おうというところも無いわけである。当面は水面下でのつばぜり合いが続くと見られる。

Ojanpera氏は、それら現存するオペレーターのサービスは、それ自体が収益を生むというよりは、ユーザーを満足させるためのマーケティングツールとして利用されてきたと指摘し、ノキアの新しいビジネスモデルを音楽業界にもたらすことへの期待感を示した。

端末の値段、Universal以外のどのレーベルがこれに参加するかなどの詳細は語られなかった。

ちなみにComes With Music対応端末はそのサービスとセットで販売されるようだ。値段はcompetitiveということになっているので、極端に高い値段ではないはずだ。一部の予想ではiPhoneと同程度の価格帯に落ち着くのではないかと見られている。